*君に会えたなら*
ずっと近くにいて、ずっと遠かった君の存在。
泣いた時、嬉しかった時、君はずっとそばにいた。
…そばに?
いや、もっと、遠いところ。
近いけれど、指一本届かなかった、
遠いところ。
ずっと会っていたのに、会えてなかった。
「ブルース…」
『なんでしょう、炎山様。』
「いや、なんでもないんだ。なんでも…」
『?』
会いたい。
『は…?』
炎山は少し間をおいてからハッとなった。
しまった。心の中で言っていたつもりが声に出してしまっていた。
『炎山様…それはどういう…?』
「いや、気にするな。」
『ですが…』
「うるさいっ!!気にするなといっている!!」
少し怒鳴ると、ブルースはしゅん、となってPETのなかで足を折り、その膝に腕を絡ませ座っている。
いわゆる、”体育座り”である。
なにやら黒くよどんだオーラを発している。
いつもの凛、とした容姿からは想像できない格好だ。
流石の炎山もバツが悪そうに、
「す、すまん、言い過ぎた。ブルース。」
『いえ、俺が聞いたのが悪かったのです。…炎山様、お幸せに…グスッ』
「は…?」
どうやらブルースは先ほどの”会いたい”は仕事ばかりの炎山が
彼氏(もちろんそんな奴はいない)に”会いたい”と言っていると勘違いしているようだ。
「おい、ブルース。何を勘違いしている」
『そん…ひっく、気休めはよし…グスッ』
「…会いたいのは、お前だから…」
『えっ?』
そういうと、炎山はPETに軽く口付けをし、部屋をあとにした。
一方、ブルースはなにがなんやらでフリーズしてしまった。
END